佐藤憲治 53/100(書籍)

Product ID: 2502SK-1

3,845円+税

在庫15個

北海道旭川で50年以上にわたって木彫り熊を掘り続ける佐藤憲治氏の書籍。


時代の流れに翻弄されながらも現在では現代の巨匠として各方面へ紹介される。


佐藤氏の制作活動と人生を振り返る一冊です。

現在の作風とは異なった過去の巨大な作品など貴重な写真資料も掲載されています。

発売日 : 2025年1月31日
価格 : 3,800円(10%税込)

サイズ : 約21.5x15.5x1.8 / 160ページ
発行 : Vada、ROOMS
送料 : 全国一律430円 レターパックライトの料金が適用となります。
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はじめに
 ノミと槌(つち)のぶつかる音が、工房のなかに何度も響く。
床には木材から削りとられた木のチップが落ち葉のように散らばっていて、
その日一日に終えた仕事の量を示している。
旭川に工房を構える作家・佐藤憲治は、二十一歳でこの仕事をはじめてから五十三年間、木彫りの熊を彫り続けてきた。「木彫り作家」と紹介しようとすると、
本人は「作家なのかな、でも、熊彫りだな」と言う。妻と、息子一人、娘二人、家族五人の暮らしを「熊を彫る」という仕事で立ててきた。

 佐藤憲治作品を数多く取り扱う「Vada」の和田泰斗は、はじめてその木彫り熊に出会ったとき、「動き出しそうだ」と驚いた。佐藤さんの彫る熊は、ひと目見れば抽象的でかわいらしい印象を持っていて、ただ、目を離さずに眺めているとゆっくりと動き出しそうな雰囲気がある。一本一本の毛が彫られていなくても、隆起する筋肉が強調されていなくても、その奥に生き物の形がある。いつか「憲ちゃん熊」と、佐藤さんのあだ名をもじって呼ばれるようになったその熊は、今や旭川にとどまらず、木彫り熊を愛する人々の手に渡るようになった。

佐藤憲治の熊と出会ってから、和田は熊と買い手の橋渡しを続けてきた。そして、彼が作家生活五十三年を迎えた二〇二四年、協力して作品を広めてきた「ROOMS」の川瀬真吾と共に、佐藤憲治さんの作家人生を本にまとめることを決めた。この本に込めたのは、佐藤健二がこれまで歩んだ熊彫り人生に対する賛辞であり、これからも続く作家生活がより実り多きものになるようにとの祈りでもある。
 かつては北海道に数多くいた、木彫りの熊で生計を立てる“熊彫り”の職人たちも、現在では数えられるほどに少なくなってしまったという。現役で熊を彫り続ける佐藤さんの言葉と作品は、寡黙な“熊彫り”たちの生き方を伝える貴重な証言になった。生き生きとした熊を彫り続けた作家・佐藤憲治の半生を、この本のなかで振り返っていく。